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マンション給水方式変更 増圧ポンプ 直結増圧方式 メリットとデメリット
公開日:2024/03/10

受水槽や高架水槽などに貯水せず、水道本管の水圧を利用して各家庭に直接給水する「直結給水方式」は、さまざまなメリットがあると言われています。
既存のポンプや貯水槽などの設備を撤去して、増圧ポンプを設置して直結給水方式に変更する工事は、本当にメリットばかりで、果たしてデメリットは全くないのでしょうか?
実際の工事を多く手掛けている「水道設備工事業者」の視点で、工事技術や費用対効果から検証します。
目次
◯直結(増圧)給水方式への変更を進める「賛成派」の意見とは?
◯直結(増圧)給水方式への変更を進める「反対派」の意見とは?
◯給水方式変更を決めるための具体的な注意点やポイントとは?
今週のもっと知りタイム
受水槽(加圧)式と直結増圧式のコスト比較から、客観的に判断する
直結(増圧)給水方式への変更を進める「賛成派」の意見とは?
既設の受水槽や高架水槽を利用した給水方式から、直結給水方式の変更に際して、賛成派が考える大きなメリットに「水道水を貯めずに新鮮な水が供給されるので、衛生面が向上する」という意見があります。
この変更の理由は大きく、かつ説得力があります。変更を決めたほとんどの組合では、住民のコンセンサスをとる際の一番のポイントとなっています。
次に、経済的なメリットとして
◯受水槽の点検・清掃の費用が不要になる
◯受水槽の修理・交換費用が不要になる
◯給水ポンプの電気代が節約になる
などが挙げられます。
そして最後に「受水槽タンクの撤去後のスペースが有効利用できる」ことから、駐車場などのスペースに使うことを変更理由にするケースも見受けられます。
直結(増圧)給水方式への変更を進める「反対派」の意見とは?
では反対派の意見にはどのようなものがあるのでしょう?
給水方式の変更に懐疑的な人たちの多い意見は、「本当に経済的なメリットを受けることができるのか?」というものです。
点検や清掃の費用がなくなっても、新しい設備にも当然メンテナンスコストがかかりますし、新しい設備への切り変え工事費を使うことも含めて、具体的にどれくらいのコストメリットがあるのかがはっきりしないといった主張も聞かれます。
また水を貯める衛生面での問題も単なる「イメージの問題ではないか」といった意見や、「災害時に貯水槽は役立つのではないか」などの反対理由としてあります。
給水方式変更を決めるための具体的な注意点やポイントとは?
これらの意見に対して、「増圧直結給水方式」への切り替え工事の際検討するべきポイントを、実際の「技術面」「コスト面」などから検証し、お住いのマンションでは、実際にどのような効果があるのかを考えます。
切り替えの際、工事技術の面から注意が必要なポイントは次の3つです。
①マンション全体の水圧を上げるために引き込み管を太くする必要がでます。水道本管からの口径を変更するために道路を掘るなどの大掛かりな工事が必要にならないかチェックをして、具体的な工事費用を検証します。
②直結増圧ポンプを設置すると、配管に大きな水圧がかかるようになります。配管の経年劣化の進んだマンションでは、水圧の変動が理由で水漏れ事故が発生するリスクがあります。事前に配管の耐圧テストを行う必要があります。
③水圧の変化は各家庭の水道メーター周りの配管にも影響するため、「メーターユニット」へ変更工事が必要になる場合もあります。行政の担当窓口に確認しましょう。工事費用が大きく変わるケースもでてきます。
★★★もっと知りタイム★★★
受水槽(加圧)式と直結増圧式のコスト比較から、客観的に判断する


「受水槽方式」をそのまま利用した場合と「直結増圧給水方式」に変更した場合の、費用比較をしてみます。
参考画像の見積もり書は、築25年前後のマンションを想定した直結増圧ポンプに変更後と、受水槽を維持した場合の5年間の運用費用の目安です。当然ですが、購入・設置・保守作業の業者により価格は大きく変わりますので、あくまでも目安とお考えください。
マンション毎の様々な条件によりますのでコストの比較は単純にはできませんが、5年間単位ですと概算150万円ほどの差額で給水方式変更が可能になると考えてよいでしょう。(水道メーターユニットの交換が必要な場合は、プラス150万円の追加工事が必要になります)
この差額と、給水方式変更によるさまざまなメリットとの費用対効果を考えて判断するとよいでしょう。
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