もっと知りたい「今週のキーワード」
マンション 高架水槽 交換費用 仕組み 水圧 直結給水方式
公開日:2023/07/24

マンションの屋上にある高架水槽は、受水槽に一度貯めた水を揚水ポンプで高架水槽まで押し上げ貯水し、そこから自然落下する水の勢いを利用して各戸に給水するために利用されます。
生活用水を供給する大切な設備ですが、その保守点検や更新についてはどのような基準で検討すればよいのでしょうか?
目次
◯高架水槽を使った給水設備は「時代遅れ」って本当?
◯高架水槽の寿命は?
◯老朽化したらどうする?
今週のもっと知りタイム
「直結増圧供給方式」への変更を検討するべき
高架水槽を使った給水設備は「時代遅れ」って本当?
2つの「問題」
「時代遅れ」という表現が適当かどうか分かりませんが、高架水槽などの「受水槽」を利用した給水設備の問題としては大きく2つあります。
1つは「衛生面」の問題です。
受水槽(高架水槽)に貯められる水道水にはミネラルが含まれているため、それが硬化して「水垢」が蓄積されてしまいます。また排水管の接続部が破損していると、土や砂、ホコリや虫などの死骸などが溜まり衛生上の問題も発生し、さらにカビや雑菌が繁殖すると、居住者の健康問題に発展する可能性もあります。
2つ目は「ランニングコスト」の問題です。
高架水槽を使った給水設備は、揚水ポンプの電気代やメンテナンス費用、地上(地下に設置しているケースもある)の受水槽と屋上高架水槽の2か所のタンクの清掃・メンテンス費用が発生します。受水槽を使わない直結給水方式との長い目でみた「ランニングコスト」は比較検討するべきでしょう。
高架水槽の寿命は?
耐用年数の考え方
高架水槽をはじめ受水槽と呼ばれるタンクは、設置後何年ぐらいが寿命とされるのでしょうか?
現在、最も一般的なFRP(繊維強化プラスチック)製の受水槽・高架水槽は、素材メーカーによる耐用年数が15〜20年とされています。また、タンク本体の素材とは別に、ネジやパッキン、接続しているさまざまな機能の配管などの劣化も考慮しなくてはいけません。
年に1回の定期メンテナンスをする前提で、ほとんどのマンションでは、地下に設置されている受水槽は30〜40年、屋外(地上)では25年〜 30年、天候の影響の大きな屋上の高架水槽で20〜25年を目安に、長期修繕の計画をしているようです。
義務付けられている点検と清掃
高架水槽(貯水槽)で10立方メートルを超える設備は、毎年1回以上の定期的な清掃・点検および、検査機関で水質検査(法定検査)を受けることが義務付けられています。
また10立方メートル以下の設備も、各自治体の条例等により適切な衛生管理が定められており、認可を受けた業者による報告が義務付けられています。
高架水槽や受水槽などの管理については、東京都水道局のホームページにわかりやすく記載されていますので、参考にするとよいでしょう。
https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/chosuisou/faq.html
老朽化したらどうする?
3つの選択肢があり、客観的なデータから判断するべき
ひとつの目安として、故障やトラブルがない状態で設置後25年以上を経過したら、
◯清掃・部分的な補修
◯交換
◯給水方式の変更
の3択で考えます。
選択の判断をする際、基準としてもっとも分かりやすのは「費用対効果」でしょう。
それぞれの方法における具体的な
◯工事費用
◯工事後のランニングコスト
◯断水期間を含む工期
◯衛生面などの付加価値
の4項目の客観的な数字や条件を、工事業者(できれば2社以上)に提案と見積りをしてもらいます。
その資料を元に、それぞれの「メリット」「デメリット」を可視化して住民の皆さんで共有して、お住まいのマンションに合った対策を講じましょう。
★高架水槽の工事事例
★★★もっと知りタイム★★★
「直結増圧供給方式」への変更を検討するべき


お住まいのマンションが、水圧や行政の基準などの点から「直結(増圧)給水方式」に適応するマンションであれば、その方向で検討をするべきです。どんな業者に問い合わせても、ほとんどは同じ方向の提案が出てくると思います。
一部、災害時に「水瓶」として利用できるメリットとして、給水方式は現状のまま「交換」をすすめる業者もいると思いますが、「災害の程度」やそれに伴う「断水の期間」などを住民でよく検討をして、総合的に判断をしましょう。
大規模修繕工事の予定まで、あと1〜2年あり目立つたトラブルがない場合でも、当面は高架水槽を清掃・補修して利用を継続し、大規模修繕工事のタイミングで給水方式の変更を検討するべきでしょう。
高架水槽は地上の受水槽の撤去や解体より費用がかかるケースもありますが、場合によっては給水方式の変更のみ行い、高架水槽はそのまま残すという選択肢もあります。外観の問題は残りますが、1日も早く新鮮な水を供給できる方が住民のためという考え方もあります。
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