もっと知りたい「今週のキーワード」
マンション管理費値上げ 修繕積立金不足 管理コスト見直し 規約改正 合意形成
公開日:2025/04/15

ここ数年の物価上昇は、食料や日用品にとどまらず、マンションの維持に必要な「管理費」や「修繕積立金」にも大きな影響を及ぼしています。
特に築20年以上のマンションでは、「想定より高額になった修繕費用」に直面し、多くの管理組合が修繕積立金の不足に悩まされています。
物価や人件費、建設資材の高騰は予想を上回るペースで進んでおり、20年前の積立基準ではもはや対応できないケースが大半です。
マンションの生活環境維持にかかるコストについて考えます。
目次
◯マンション管理費や修繕積立金の金額はどうやって決まるのか?
◯マンションの「管理費」上昇への対策は?
◯「修繕積立金値上げ」の合意形成をどのように進めるか?
今週のもっと知りタイム
居住者の人生設計に大きな影響がある管理費や積立金の値上げ
マンション管理費や修繕積立金の金額はどうやって決まるのか?
管理費と積立金の違い
実際にマンションにお住まいの方でも混同しがちですが、両者の役割は明確に異なります。
「管理費」は、共用部分の清掃、管理人の人件費、エレベーター点検、共用部の電気代など、「日常的な維持・運営」にかかる費用に充てられます。
一方「修繕積立金」は、建物や設備の経年劣化に備える“貯蓄”であり、大規模修繕や更新工事などに使用されるものです。
金額の決め方
管理費と修繕積立金は、毎月、住民から同時に徴収されます。
「管理費」は、管理組合が毎年作成する予算案に基づいて決定され、実際の支出と照らし合わせて管理されます。実務的には、管理会社の見積もりを参考にするケースが多いです。
また、多くのマンションでは「専有部分の面積」に比例して各戸の負担額が設定されています。
「修繕積立金」は、10~30年のスパンで策定される長期修繕計画に基づき、将来必要となる工事費用を見越して金額が決まります。
なお、「管理費で修繕もまかなっている」と誤解されがちですが、高額な修繕工事には管理費では対応できません。それぞれ異なる目的の費用であることを理解しておく必要があります。
マンションの「管理費」上昇への対策は?
現在の経済情勢を踏まえると、管理費や修繕積立金の値上げはやむを得ないという認識は、多くの管理組合で共有されています。
しかし、実際に「どれくらい値上げするか」の議論は非常にデリケートな問題です。
まずは、比較的内訳が明確な「管理費」について見直しを検討するのが有効です。
管理費の主な内訳には以下のようなものがあります:
まずは委託先の管理会社と、各項目ごとにコスト削減の余地がないか協議してみましょう。
住民からアイデアを募ることも、「参画意識」の向上に繋がり有効です。
たとえば「照明をLEDに交換する」「共用部の一部清掃を住民で担当する」といった意見が出てくる可能性もあります。
必要に応じて、管理会社の変更や自主管理の検討も視野に入れることで、長期的にコスト意識を高めるきっかけになるでしょう。
「修繕積立金値上げ」の合意形成をどのように進めるか?
まず管理組合が取り組むべきは、専門家による客観的な評価です。
国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」なども参考にしながら、具体的な修繕内容と金額を住民に「見える化」し、計画の見直しを進めましょう。
ポイントは次の3つです:
① 長期修繕計画を再策定する
国交省が推奨する25~30年スパンを目安に再作成し、複数の専門家の意見を踏まえて優先順位の見直しを行います。
また、足場を組むなど同時に実施できる工事を検討することで、コストの共通化・圧縮が可能になります。
② 段階的な値上げ案の提示
いきなりの大幅値上げではなく、「3年後には〇〇円、5年後には…」といった段階的な引き上げ計画を提示することで、住民の理解を得やすくなります。
③ 補助金の活用
耐震補強、バリアフリー化、省エネ設備導入などは、自治体の補助金対象となるケースが多いため、補助対象となる工事を選定することも重要です。
★★★もっと知りタイム★★★
居住者の人生設計に大きな影響がある管理費や積立金の値上げ


あらゆるモノの値段が上がっている現在では、マンションの管理や維持費も据え置きという訳にはいきません。それ自体は多くの住民も理解しているものの、築年数の経過とともに、住民それぞれの生活環境や経済状況が大きく変化しているという現実があります。
大切なのは、(値上げは)「仕方がない」と「困る」の間にあるギャップをどう埋めていくか、ということです。
これは、管理組合と住民との密なコミュニケーションが不可欠です。
特に高齢者の多いマンションでは、一方的な規約改正で済ませるのではなく、丁寧な説明とコスト削減の努力、そして最終的な「落としどころ」の模索が求められます。まさに、管理組合の真価が問われる局面です。
一方、住民側にも「ただ反対する」のではなく、ライフスタイルや世代に応じた住まいのあり方を見直し、住み替えを検討するきっかけと捉える柔軟な姿勢も求められるのではないでしょうか。
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