もっと知りたい「今週のキーワード」
マンション耐震工事 耐震検査 住民の合意形成 資産価値向上
公開日:2023/11/13

マンションの資産価値には、立地条件・デザイン・設備等さまざまな見方があります。
その中でも特に近年重要視され注目をされているのは建物の「耐震性能」です。
地震大国である日本では、50年、あるいは100年に1度起こると言われている大地震に対して、構造部が大きく破損しない強度で建物は建てられています。
しかし、近年厳しくなってきている「耐震基準」の前に建てられたものの中には「耐震工事」が必要な建物も多くあります。
目次
◯マンションの「耐震性能」の基準は何がある?
◯耐震工事を行うためには、どれくらいの予算が必要なの?
◯住民の合意形成はどうやってとるの?
今週のもっと知りタイム
耐震工事の費用を抑えるためには?
マンションの「耐震性能」の基準は何がある?
「旧耐震」と「新耐震」
まずマンションの「耐震性能」を知る上で、2つの「基準」があることを覚えておきましょう。
1つめは、建築された年が建築基準法の「新耐震構造設計基準」が施行された1981年6月の前か後かで「旧耐震」と「新耐震」のマンションに分けられることです。
具体的には、建築確認申請の時期が「1981年5月31日以前」であれば「中規模の地震(震度5強) に対しても倒壊しない基準」の「旧耐震」、「1981年6月1日以降」なら「大規模の地震(震度6~7)に対しても倒壊しないことを目的」とした「新耐震」として建築基準法が設定されています。
新耐震のマンションは「耐震設備」が充実して建築されていますが、旧耐震だから「耐震工事」をしなくてはいけないと言う法的な拘束力はありませんので、「耐震化工事」を行うかはあくまでも居住者の判断ということになります。
「耐震基準」
2つ目は、住宅性能評価書の指標として3段階の「耐震等級」が定められています。これは、2000年4月から施行された「住宅の品質の確保の促進等に関する法律」を元にした評価制度です。
耐震等級1の「建築基準法レベル」から、その1.25倍の耐震等級2、そして1.5倍の耐震等級3の3段階に分かれいます。
しかし耐震等級1でも、「100年に1度といった極めて稀に発生する地震に対して倒壊や崩壊はしない。さらに、数十年に1度程度の地震に対しては、構造躯体に損傷を与えない性能」と規定されているので、普通に生活する分には耐震性は十分に確保されています。
耐震工事を行うためには、どれくらいの予算が必要なの?
ではお住まいのマンションが「旧耐震」時代に建てられたもので「耐震等級0」の物件であったり、「耐震等級1」であっても「耐震性能」に不安があり「耐震工事」を行う場合、どれくらいの予算が必要となるのでしょう?
耐震化の場所・規模・工法はもちろん、その建物の老朽化の状態など多くの条件を加味しないと耐震化のコストは分かりません。
しかしあくまで一般的な予算ということで言えば、一戸あたり安くて約300万円、高くて約1,000万円前後かかると考えられます。
修繕積立金のなかで、優先順位を決め検討をしていかなければならない大きな取り組みになることは間違いありません。
住民の合意形成はどうやってとるの?
本年(2023年)11月12日の読売新聞に区分所有法の改正の報道がありました。現在老朽化したマンションの取り壊しには「全員」の同意が必要ですが、それを「5分の4」以上に緩和し、さらに耐震性などに問題がある場合は「4分の3」以上で建て替えや取り壊しを可能とするものです。
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20231111-OYT1T50264/?from=smtnews
この20年ぶりの大きな改正には、住民の合意形成を円滑に進める狙いがあると言われており、行政もマンションの「耐震化」を加速させたい思惑がある左証と言えます。
この20年ぶりの大きな改正には、住民の合意形成を円滑に進める狙いがあると言われており、行政もマンションの「耐震化」を加速させたい思惑がある左証と言えます。
こういった背景を前提として、まずは「現状把握」するための客観的な「耐震診断」が必要となります。マンションとして大きな取り組みになることは間違いありません。契約している管理会社や耐震診断を行う会社に連絡する前に、国土交通省の「分譲マンション耐震化マニュアル」など、情報収集してそれを住民全員と共有しながら、管理組合主導で少しづつ話しを前に進め、「合意形成」をするための下地作りが大切になるでしょう。
https://www.mlit.go.jp/common/001086801.pdf
★★★もっと知りタイム★★★
耐震工事の費用を抑えるためには?


「マンションの耐震問題」は、単純に費用の問題だけではなく住民の人生設計とも大きく関わる大きな課題です。
「やりたい」あるいは「やらなくてはいけない」状況だとしても、やはり住民の本音としては「工事費用の金額次第」ということになると思います。
先の読売新聞の記事でもあったように、国や地方行政は「老朽化マンションの耐震化」には法整備に積極的ですが、同時に対策を後押しするための具体的な「資金援助」などの融資を行なっています。
1つめは、「税制優遇措置」です。この対策により、改修費用の10分の1を控除することができたり、また、マンションの固定資産税を半分に削減することができます。
2つめは住宅金融支援機構が行っている耐震工事への金利などの優遇も含めた「融資」です。
他にも地方自治体が行なっている「助成制度」もあり、「住宅の耐震診断や耐震改修を行う際の費用の一部が助成として免除される」などを利用することで費用を圧縮した工事が可能になります。
このように、マンションにはいくつかの指標で「耐震」に対する客観的な評価基準が存在し、また費用の助成などの「対策」も多くあります。
昨今頻発する地震をきっかけに、お住まいのマンションの耐震性能を確認して、マンション全体で話し合ってみてはいかがでしょうか?
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