公開日: 2023/08/14 / 更新日: 2026/08/25

マンションにお住まいの皆さんは、普段使っている生活排水がどのような経路を通って処理されているかご存じでしょうか?
普段トラブルなく使えている間は意識する機会が少ないかもしれませんが、万が一排水トラブルが発生すると、全世帯の生活環境に及ぶ非常に大きな問題へと発展してしまいます。
マンションのオーナー様や管理組合様が排水設備の基本的な仕組みを理解しておくことで、緊急時の対応がスムーズになるだけでなく、重大な事故を未然に防ぐことにもつながります。
目次
この記事のポイント
この記事では、マンション排水設備の仕組みと排水ポンプの役割・種類・構造の違い・耐用年数(寿命)・適切なメンテナンス方法を解説しています。おさえておきたい主なポイントは以下の通りです。
【排水の区分と2つの排出経路】
生活排水は汚水・雑排水・雨水の3種類に分類され、建物の構造に応じて「自然落下方式」と「圧送方式(ポンプ排水)」の2系統で処理されます。
【排水ポンプの種類と構造の違い】
地下の水槽に溜まった排水を下水本管へ揚水する設備であり、汚水用と雨水用ではフィルターや固形物を砕く刃の有無など構造が大きく異なります。
【寿命目安と2台交互稼働の重要性】
排水ポンプの寿命は約7〜10年です。バックアップ機能を備えた2台交互運転の仕組みと定期的な点検が未然の事故防止に不可欠です。

マンションは排水設備の仕組みとは?
マンションの「排水設備」は、給水設備と並んで人々の生活を支える極めて重要なインフラです。万が一、断水などの給水トラブルが発生した場合は市販のミネラルウォーターや貯水で一時的に補うことも可能ですが、排水の事故や逆流トラブルは全世帯に被害が及ぶ深刻な問題となります。
まずは、マンション内で発生する排水の分類と、それがどのように外部へ排出されるのか基礎知識を確認しておきましょう。
生活排水は3種類に分類される
マンションの日常生活から出される排水は、発生する場所や含まれる汚れの性質によって、大きく以下の3種類に分けられます。
- 汚水(おすい):トイレから排出される尿や便を含む水
- 雑排水(ざつはいすい):キッチン・洗面所・浴室・洗濯場などから排出される生活排水
- 雨水(うすい):屋上、バルコニー、敷地内の地表面などに降った雨水


これらの生活排水が建物からどのように排出されていくのか、その経路について詳しく見ていきましょう。
2種類の「排水経路」とその違い
マンション内で発生した排水は、敷地の立地条件や建物の構造・高低差に応じて、主に2つの経路(方式)のいずれかを通って処理されます。
| 排水方式 | 概要・仕組み | 主な適用箇所 |
|---|---|---|
| ① 自然落下方式 | 配管の傾斜(勾配)を利用し、重力でそのまま道路の下水本管へ流す方式。 | 地上階(下水本管より高い位置の配管) |
| ② 圧送方式(ポンプ排水) | 地下水槽(ビルピット)に水を溜め、排水ポンプで汲み上げて流す方式。 | 地下階(下水本管より低い位置の配管) |
道路に埋設されている下水本管よりも、建物の地下階や配管の設置位置が低い場合、自然落下だけでは排水できません。そのため、地下に設けた「ビルピット(地下排水槽)」に一度水を溜め、排水ポンプを使って高い場所へ汲み上げてから下水本管へ流す仕組みが採用されています。
※参考資料:東京都下水道局「ビルピット対策の手引き」(地下排水槽の仕組みと構造についての解説)
マンションで欠かせない「排水ポンプ」とは?
自流(自然落下)できない排水を屋外の下水本管へ送り出すために、欠かせない設備が「排水ポンプ」です。ここでは、排水ポンプが果たす役割や主な種類、そして内部の具体的な構造について詳しく解説します。
排水ポンプの「役割」
排水ポンプの最大の役割は、自然落下だけでは排出できない低い場所にある排水を、高い位置にある道路の下水本管まで汲み上げること(揚水)です。
通常、水槽内に完全につけて使用するため「水中ポンプ」と呼ばれたり、水を高い場所へ汲み上げる目的から「揚水ポンプ」と呼ばれることもあります。排水ポンプが正常に動作し続けることで、地下階やマンション全体の排水が滞ることなくスムーズに処理されます。


排水ポンプの「種類」
排水ポンプには、汲み上げる水の質や用途に合わせていくつかの種類が存在します。排水の種類に応じた適切なポンプを選定しないと、異物詰まりや早期故障の原因となります。
| ポンプの種類 | 主な対象排水 | 特徴 |
|---|---|---|
| 汚水用水中ポンプ | トイレの排水(汚水) | 固形物が詰まりにくい広い流路構造 |
| 雑排水用水中ポンプ | 台所・浴室・洗濯等の生活雑排水 | 油分や小さなゴミに対応する汎用型 |
| 雨水・湧水用水中ポンプ | 雨水、地下湧水、地下駐車場清掃水 | 固形物が少ない水に対応した高効率設計 |
排水ポンプの「仕組み(構造)」
一見どれも同じように見える排水ポンプですが、固形物が混ざらない「雨水用」と、トイレットペーパーなどが混ざる「汚水用」では、内部の構造が異なります。
| 比較項目 | 雨水用ポンプ | 汚水用ポンプ |
|---|---|---|
| 吸込口(フィルター) | 網目が細かく、砂や小さなゴミだけを遮断する。 | 汚物が詰まらないよう、開口部が広く作られている。 |
| 内部の刃(カッター) | なし(水だけを効率よく吸い上げる)。 | あり(トイレットペーパーや固形物を細かく砕く)。 |
| 材質・耐久性 | 一般的な金属・樹脂製。 | 汚れやガスに強く、サビにくい高耐久素材。 |
このように、汚水用ポンプには固形物による配管詰まりを防ぐための工夫が施されています。用途に合わないポンプを設置すると短期間で故障の原因となるため、設置環境に合わせた適切な機種選びが大切です。
排水ポンプの「寿命」は?メンテナンスや交換の進め方
排水ポンプの耐用年数(寿命)の目安
マンションに設置されている汚水ポンプ・排水ポンプの寿命目安は約7年〜10年程度です。常に水中で作動している環境下にあるため、地上の設備機器と比較しても経年劣化が進みやすい傾向にあります。
なお、設置環境や使用頻度、日頃の定期メンテナンスの実施状況によっても耐用年数は大きく変動します。
マンションの排水を止めないための安全対策
排水ポンプの突然の故障によるあふれ事故を防ぐため、国土交通省の基準等においても、排水ポンプは「2台1組」で設置することが義務付けられています。
一般的な水中ポンプシステムでは、2台のポンプが交互に稼働する自動交互運転の仕組みが採用されています。これにより1台あたりの負荷を減らして寿命を延ばすだけでなく、万が一片方のポンプが故障した場合でも、もう1台がバックアップとして自動的に動作するため、排水が完全に停止するリスクを回避できます。
排水ポンプは地下の水槽内など普段目に見えない場所に設置されているからこそ、事故が起きる前の「定期点検」と「早期の設備更新・整備」が非常に重要です。


【まとめ】適切なメンテナンスでマンションの排水トラブルを未然に防ぎましょう
マンションの排水設備は、住民の皆様が快適で衛生的な生活を送るために欠かせない重要インフラです。特に地下の水槽から排水を汲み上げる排水ポンプは、目立たない場所で絶えず稼働しており、約7年〜10年での交換が必要となります。
ポンプが完全に停止してしまうと、汚水の逆流や溢水といった重大なトラブルを引き起こすリスクがあります。トラブルを未然に防ぐためにも、定期的な点検を実施し、寿命を迎える前に早めの交換工事をご検討ください。
株式会社サンコウ設備では、給排水設備のプロとして現場調査から最適な交換のご提案、施工まで自社一貫体制で承っております。排水設備の異常や点検に関するお悩みがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
マンション排水設備に関するよくある質問
Q 排水ポンプの交換目安時期はどれくらいですか?
排水ポンプ(水中ポンプ)の寿命目安は約7年〜10年です。常に水中にあるため劣化が進みやすく、設置から8年以上経過している場合は、故障前の点検・交換計画をおすすめします。
Q 排水ポンプが故障するとどのような問題が起こりますか?
地下の水槽から排水を汲み上げられなくなるため、水槽から汚水があふれ出したり、最悪の場合は低層階や地下の部屋・駐車場で排水の逆流や浸水被害が発生するリスクがあります。
Q なぜマンションの排水ポンプは2台設置されているのですか?
万が一1台が故障した場合でも、もう1台がバックアップとして稼働して排水停止を防ぐためです。また、2台を交互に運転させることで、ポンプ自体の摩耗や劣化を抑える効果もあります。

平成7年の設立以来、30年にわたり給排水設備を中心としたインフラ工事に携わる。これまでに30,000件以上の工事実績を持ち、現場で積み上げた確かなノウハウが強み。
大手建築会社などの仲介業者を通さず、自社で直接ご提案から施工までを行う「工事直販」のスタイルにこだわり、多くの管理組合様やビルオーナー様から厚い信頼を寄せていただいている。





















