マンションの排水管はどこから専有部?漏水事故の責任範囲と正しい管理方法を解説

公開日: 2025/02/15  / 更新日: 2026/09/29

マンションの排水管老朽化と管理

2025年1月、埼玉県八潮市において排水管(下水道管)の老朽化が原因とされる大規模な道路陥没事故が発生し、大きな話題となりました。普段当たり前のように使っている排水設備ですが、そのインフラとしての重要性と老朽化リスクを再認識させられる出来事です。
今回の事故は公道の排水設備で起きましたが、「排水管の老朽化」という観点では、公共の設備であってもマンションなどの集合住宅の敷地内であっても全く同じリスクが存在します。
特にマンションの排水設備は権利関係や管理責任が複雑です。万が一のトラブルに備えて、住民一人一人が仕組みと所有区分をしっかりと理解しておくことが重要です。

アイコンこの記事のポイント

この記事では、マンションの排水管における専有部と共用部の境界や漏水発生時の責任範囲、適切な管理・点検方法を解説しています。おさえておきたい主なポイントは以下の通りです。

【マンション排水管にも住民の管理責任がある】

マンションの配管はすべて共有物ではなく、自室の専有部分にある排水管(枝管)は各住民(区分所有者)に管理責任が発生します。

【排水管の「専有部」と「共用部」の境界】

原則として縦に伸びる「立て管」や「排水継手」は共用部、そこから各住戸内へ引き込まれる「排水枝管(横引き管)」が専有部となります。

【漏水事故が起きた際の責任と定期管理】

専有部の老朽化による漏水は上階住民の責任となるのが原則です。トラブルを防ぐため、管理組合主導で専有部も含めた定期的な高圧洗浄や点検を行うことが推奨されます。

マンションの排水管における管理責任の基本

「マンションの配管管理や修繕は、すべて管理組合や管理会社が対応してくれるのでは?」と思われている方も多いかもしれません。
しかし、マンションの排水管はすべての部分が建物の共有物というわけではなく、お部屋の中を通る配管については住民(区分所有者)自身に管理責任が発生します。

水道設備と所有区分普段意識することは少ないかもしれませんが、水道設備に関する事故が発生した場合、「所有権」とともに「管理責任の範囲」が重要な問題となります。
マンションの管理規約には、排水管の「専有部分」についての規定があるはずです。また、国土交通省の「マンション標準管理規約コメント」にも、その取り扱いが明記されています。

住民に管理責任がある排水管の「専有部」とはどこから?

排水管の管理範囲を正しく理解するうえで、同じ配管設備である「給水管」との違いを比べると、それぞれの境界や管理上の注意点がより明確になります。

設備共用部と専有部の境界管理上の注意点
給水管水道メーター常に水圧がかかっているため、ピンホール(小さな穴)等による漏水が起きやすい。
排水管立て管と接続する「排水継手」水圧がかからず自然勾配で流すため、油脂汚れや髪の毛が溜まりやすく、詰まりや溢水・漏水の原因になりやすい。

上記の表にある通り、給水管の場合は各住戸の入口にある「水道メーター」という分かりやすい境界機器が存在します。そのため、本管から各住戸のメーターまでが共用部分となり、メーターから住戸内の配管までが専有部分とされるのが一般的です。

排水管の区分 一方、台所や浴室などの雑排水管やトイレの汚水管といった排水管には、メーターのような仕切りがありません。そのため、各住戸からの排水・汚水を集めて流す「立て管(縦方向に流れる排水管)」と、この立て管と専有部分をつなぐ「排水継手」までが共用部分とされます。

  • 共用部分:各住戸からの排水・汚水を集めて流す「立て管」、および立て管と専有部分をつなぐ「排水継手」
  • 専有部分(住民の管理責任範囲):排水継手から先の「枝管(横引き管)」

マンション内で排水事故が起きた場合、責任はどうなる?

原則は「専有部(上階の住民)」に責任が発生する

室内での漏水トラブル専有部分である排水枝管の不具合や劣化が原因で漏水が発生し、下の階の住戸に被害を与えた場合、基本的にはその住戸の所有者(上階の住民)が管理責任を問われ、修繕や賠償責任を負うことになります。

例外的に所有者が責任を負わないケース

排水管の区分(断面略図)マンションの排水設備は築年数によって構造が異なり、必ずしも所有者が責任を負うとは限らないケースもあります。
例えば、継ぎ手までの排水枝管が自室の床下スラブ(コンクリート床)を貫通し、下階の天井裏を通っている構造のマンションで漏水事故が発生した場合です。通常であれば排水枝管は専有部分とみなされるため、上階の住民(区分所有者)が賠償責任を負うことになります。

最高裁判決例の解説しかし、平成12年(2000年)の最高裁判決では、「下階の天井裏にある排水管は、上階の住民が点検や修理を行うことが構造上不可能であるため、共用部分と認定する」との判断が下されました。この判決により、類似の構造を持つマンションでは、排水枝管の一部が共用部分として扱われるケースがあることを認識しておく必要があります。

築年数の古いマンションの排水設備はどのように管理・点検すればよいのか?

管理組合主導による「定期的な雑排水管清掃(高圧洗浄)」

多くのマンションでは、排水管トラブルを未然に防ぐため、管理組合主導で年に1回以上の「雑排水管清掃(高圧洗浄)」を実施しています。

高圧洗浄作業の様子この清掃では、各住戸の台所や浴室、洗濯機の排水口から高圧水を流し、詰まりや溢れの原因となる固着した汚れを除去します。
一般的に、まず1階のマンホールまでの横引き管を清掃し、その後「1階から順に上階へと立て管を洗浄していく」方法が取られます。これは、上階から始めると、下階の排水管に汚れが押し流されて詰まるのを防ぐためです。

専有部分(排水枝管)の清掃・点検をどう進めるか

専有部枝管の清掃点検マンション全体の共用排水管(立て管)を美しく保つだけでは、各住戸内の詰まりや漏水を未然に防ぐことは困難です。立て管の洗浄で共用部の通りを確保したうえで、各住戸へ繋がる配管もケアすることがトラブル予防の鍵となります。
そのため、立て管の定期清掃のタイミングに合わせて、専有部分である排水枝管も点検・清掃を行うことが望ましいでしょう。

管理組合での検討専有部分の枝管の清掃費用は本来所有者が負担すべきものですが、管理規約に「構造上一体となった部分は共用部分とみなす」との記載があれば、管理組合の費用で実施することも可能です。
マンション全体の利益を考え、管理組合主導で専有部分の排水枝管の清掃・点検を実施することを検討してみてはいかがでしょうか。

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【まとめ】マンション排水管の管理責任を正しく理解しトラブルを防ごう

マンションの排水設備は、建物を貫く「共用部(立て管)」と、各住戸に引き込まれた「専有部(排水枝管)」に分かれており、専有部の管理責任は各部屋の住民(区分所有者)にあります。
しかし、配管が下階の天井裏を通っているなどの構造的理由により、管理責任や修繕費用の負担区分が複雑になるケースも少なくありません。
万が一の漏水事故を防ぐためにも、日頃から管理組合主導で専有部を含めた計画的な高圧洗浄や点検を実施することが大切です。
株式会社サンコウ設備では、給排水設備の定期清掃や点検から大規模な更新工事まで、自社一貫体制の「工事直販」でスピーディーかつ高品質に対応しております。マンションの排水管トラブルや維持管理についてお悩みの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

マンションの排水管管理に関するよくある質問

Q 専有部分の排水管(枝管)で漏水が発生した場合、修繕費用は誰が負担しますか?
A

原則として、専有部分の配管トラブルはその部屋の区分所有者(お部屋の所有者)が費用を負担することになります。ただし、配管が下階の天井裏を通っているなど構造上個人での点検・管理が困難な場合や、管理規約の規定によっては共用部扱いとなり、管理組合の修繕費等から対応できるケースもあります。

Q マンションの定期的な雑排水管清掃(高圧洗浄)はなぜ必要なのですか?
A

キッチンから流れる油脂汚れや髪の毛、石鹸カスなどが配管内に長年蓄積すると、つまりや詰まりによる室内への溢水、さらには配管の破損・漏水事故につながるためです。年に1回程度の高圧洗浄を行うことで、トラブルの原因となる汚れを根本から洗浄・除去することができます。

Q 自分の部屋の排水枝管の洗浄費用を管理組合の修繕積立金から支払うことはできますか?
A

マンションの管理規約に「構造上一体となった専有部分の配管も共用部分とみなして管理組合が管理を行う」といった規定が設けられている場合、管理組合の費用で全戸一括洗浄や点検を行うことが可能です。規約の確認や改定が必要になる場合もありますので、まずは管理組合や理事会にご相談ください。

この記事の監修者
株式会社サンコウ設備 代表取締役 浅川 浩一
株式会社サンコウ設備 代表取締役 浅川 浩一

平成7年の設立以来、30年にわたり給排水設備を中心としたインフラ工事に携わる。これまでに30,000件以上の工事実績を持ち、現場で積み上げた確かなノウハウが強み。

大手建築会社などの仲介業者を通さず、自社で直接ご提案から施工までを行う「工事直販」のスタイルにこだわり、多くの管理組合様やビルオーナー様から厚い信頼を寄せていただいている。

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